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2022/09/23

第50回定期で取り上げるバッハ(シェーンベルク編曲)前奏曲とフーガ「聖アン」の音源

ご無沙汰しております、中の人です。

コロナ禍の影響で変則的な形で第48回と第49回の定期演奏会を実施させていただきましたが、ご来場いただいた皆様には本当に感謝申し上げます。

当団は、プロオーケストラと研究機関の実証実験成果などを踏まえた、かなり厳密なコロナ禍における練習ルールを早期に定め活動しておりましたが、定期は1回流れ、1回は自主的にスキップし、開催した2回も当初予定の曲数から減らしたり、練習会場の収容上限やステージに乗る人数を考慮した変則的な編成の曲を選曲するなどして過ごしてきました。

そろそろ世の中はwith コロナに向かいつつもあり、しかし第8波の懸念もありつつもあり、そんな中ですが記念すべき第50回の定期演奏会が来る2023年1月22日(日)にすみだトリフォニーホールで開催されます。

J.S.バッハ(シェーンベルク編曲):前奏曲とフーガBWV522「聖アン」
マーラー:交響曲第9番ニ長調


というプログラムです。久々の大編成です。

マーラーの9番は当団立ち上げの第1回で取り上げた曲で、中の人も久しぶりに第1回の音源を聴いてみましたが、自分で言うのもなんですが非常に上手いです。若いって素晴らしいですね。権利関係を確認の上、可能ならYoutubeチャンネルに抜粋でもUpしたいなと思っています。

ただ、この曲の場合(に限らず)年齢を重ねることによって可能になる表現というのもあるはずですので、また違った表現をできればと思っています。

さて、もう1曲取り上げるバッハのBWV522のプレリュードとフーガをシェーンベルクが編曲したバージョンですが、こちらは第3回の定期演奏会で取り上げた曲となりますが、当時は「小澤征爾 Plays バッハ」以外にあまり出回っている音源がなく苦労した記憶があります。しかも珍しいことに小澤征爾さんの演奏は正攻法とは言い難い・・・

また当時はスコアも全く流通しておらず非常に困りました。今はスコアについてはネットで気楽に購入できますので(ただしユニバーサルのしかないためそれなりに高額)良いのですが、音源は相変わらずApple MusicでもAmazon Musicでも昔と大して変わらない状況です。

ということで、予習用の音源をいくつかご紹介しておきます。

エッシェンバッハ指揮ヒューストン交響楽団

こちらの演奏ですが、かなり正攻法の演奏と思います。ただしオケがバリバリのアメリカンであり、特にホルンの音色が完全にConn 8Dですし、エッシェンバッハらしく濃い目な演奏です。弦楽器が若干弱いですが、この曲を知るにはちょうど良い演奏と思っています。



エサ・ペッカ・サロネン指揮ロス・アンジェルスフィルハーモニック管弦楽団

こちらの演奏もアメリカオケですが、サロネンということもあり若干すっきりした印象です。エッシェンバッハとサロネンの違いは大きく、非常に構造が分かる演奏と思います。

ただ、私が思うにこの編曲をしたころのシェーンベルクはまだまだオーケストレーションの勉強中という感じで、管楽器の使い方がいまいち下手で無駄にまだ音が多い印象なので、別にエッシェンバッハの演奏でも違和感を感じることはないと思います。



レナード・スラトキン指揮BBCフィルハーモニック管弦楽団

この演奏は上の二つの間、少しサロネン寄りの中庸な演奏と思います。しかし、私は音源を持っているのですが、ググっても音源情報がありません。絶滅したか?

準・メルクル指揮MDR交響楽団

この音源ですが、同じくシェーンベルクアレンジのブラームスのピアノ四重奏曲第1番op.25がメインで、準・メルクルさんのお得意のレパートリーです。カップリングとしてはこの音源が一番良いと思います。

他にもYoutubeにエーリッヒ・クライバーの演奏などがあります、まだ私は聴いてませんが、怖いもの見たさできっと聴くことになるでしょう。ぜひ皆さんも聴いてみてください。
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2020/02/04

ツェムリンスキーをミルクボーイ風に語ってみた

皆さんこんにちは。毎日ツェムリンスキー聴いてますか? 

某アカウントがツェムリンスキー氏が、今回は編集から溢れたネタを参考にし、対談同日放送された「M-1グランプリ2019」で、史上最高得点を叩き出し優勝したミルクボーイの漫才風に構成してくれました。

ミルクボーイを知らない方は、まずYouTubeでこちらをご覧になって頂いた方が分かるかなと思います。ちなみにM⁻1グランプリの時のネタはコーンフレークでした。

オセロボーイ対談『ツェムリンスキー』 

山谷 どもーーども!オセロボーイですー、よろしくお願いしますー

山 ありがとうございますー、あー!ありがとうございますーーーね、いまフライハイトの演奏会チケットを頂きましたけどもね
 
谷 ありがとうございますー

山 こんなんなんぼあっても良いもんね

谷 ありがたいですねー、是非友達誘って行きましょうー

山 いうとりますけど



谷 突然ですが、うちのおかんがね、好きな作曲家がいるらしいんやけど

山 ほー、そうなんやー

谷 その作曲家の名前をちょっと忘れたらしくてね 

山 え、作曲家の名前を忘れてもうてん?どうなってんねん、それ

谷 色々聞くんやけどな、全然分からへんねんな
山 分からへんの。ほな、おれがね、おかんの好きな作曲家、ちょと一緒に考えたげるから、どんな特徴言うてたか、教えてみてよー



谷 今度(2020/2/9@墨田)のフライハイトの演奏会で、最初に演奏される作曲家なんやと

山 ほーー、、、アレクサンダー・フォン・ツェムリンスキー、やないか

谷 ツェムリンスキーな

山 すぐわかったやんー、今フライハイトのみんな必死に練習してるもんー

谷 なるほどな。けど、ちょっと分からへんねんな 

山 何が分からへんのよー 



谷 おれも、ツェムリンスキーかな、思うたんやけどな、おかんが言うにはクラシック好きなら誰でも知ってるいうねんな

山 んーー、ほな、ツェムリンスキー違うかー
  ツェムリンスキーはね、フライハイトの選曲委員が最初「ロシア人かな?」思ったくらい知られてないからね

谷 せやねん、せやねん

山 楽譜コーナーの右下の隅っこーの方に「Z」の枠があるなんて、だーれも知らへんのやから

谷 なるほどな

山 ツェムリンスキーってそういうもんやから。ツェムリンスキーちゃうわ。ほなこれ、もーちょと詳しく教えてくれるー?



谷 聴くだけでアンデルセンのおとぎ話の情景が思い浮かぶ曲の作曲家らしいねん

山 ほな、ツェムリンスキーやないか 
  ツェムリンスキーはね、指揮者の森口さんに「予備知識なしに標題音楽の内容を伝える優れた描写能力の持ち主」と言わせてるからね

谷 おぉ

山 選曲提案者である自分も「交響曲聴いていてストーリーが感じられる」思うし、おかんの好きな作曲家はツェムリンスキーで決まりや

谷 いや、分からへんねん、でも

山 何が分からへんのこれでー 



谷 おれも、ツェムリンスキーかな、思うてんけどな、おかんが言うには大学オケで誰もが一度は演奏する

山 ほなツェムリンスキーちゃうやないか
   ツェムリンスキーはね、皆が演奏してそうな『なんちゃらスキー』いうのに、演奏経験ない人がほとんどなわけ

谷 せやねん

山 ギネスブックに載ってる、ツェムリンスキーの演奏回数記録は「2」やねんから

谷 なるほどな

山 大学オケで誰もが一度は演奏する、ならツェムリンスキーちゃうがな。ほな、もーちょと何か言うてなかったかー?



谷 名前を略すとちょっとかわいい名前になる

山 ほな、ツェムリンスキー、やないか
   ツェムリンスキーは不細工だったと言われているけど、『ツェムツェム』言うたら、ちょとかわいい名前に聞こえるんやから

谷 せやねん

山 それに似顔絵見るとね、今だったらむしろ「かっこいい」言われてちょっと人気出てんちゃうか?と俺は睨んでるよー 

谷 なるほどな

山 ツェムリンスキーやないか

谷 いや、分からへんねんて
山 なんで分からへんのこれでー 



谷 おれも、ツェムリンスキーかな、思うてんけどな、おかんが言うにはその名前聞くと、みんなすぐにメロディー歌いだす

山 ほなツェムリンスキーちゃうやないか
   今、だーれもこれ読みながら、頭の中でツェムリンスキーのメロディー流れてないからね

谷 せやねん

山 フライハイトがお客様に魅力を伝えようと必死に宣伝してるくらいなんやから。わけのわからん団員の対談やって

谷 せやねんせやねん

山 ツェムリンスキーちゃうがな、それ。ほな、もーちょと何か言うてなかったかー? 



谷 マーラーの奥さんになったアルマ・ウェルフェルに捨てられた男らしいねん

山 ほなツェムリンスキーやないか
   マーラーとアルマの馴れ初め話で必ず出てくる男だからね。曲知らなくても『マーラーに乗り換えられて、捨てられた男』で知っている人は、結構おるのよ

谷 せやねん

山 魔性の女と言えばアルマだから、色んな男達を転がした女だから、その女に捨てられたというならツェムリンスキーや絶対

谷 分からへんねん

山 何が分からへんねん

谷 おれもツェムリンスキーや、思ったんけどな 

山 そうやって~



谷 でも、おかんが言うにはツェムリンスキーではないていうねん
山 ほなツェムリンスキーちゃうやないか
   おかんが『ツェムリンスキーではない』というなら、それはもうツェムリンスキーちゃうやないか、先言えよー

谷 せやねん

山 おれがさっき捨てられた男の真似頑張ってた時、お前どう思ってたー?

谷 申し訳ない、思ってた

山 おかんの好きな作曲家、ほんまに分からないやないか、どーなってんねん

谷 で、おとんが言うには、

山 おとん

谷 ハンスロットちゃうか

山 いや絶対ちゃうやろ、もうええわ

谷山 どーもありがとうございましたー 

(作:私が好きなのはベートーヴェン)
2020/01/26

対談企画「ツェムリンスキーを熱く語る」その2

さて、前回はこの曲が今回の演奏会で演奏されることとなった経緯と、ツェムリンスキーをめぐる時代背景と人間模様について語っていただきました。本日はその続きからとなります。

プロフィール

山崎

中学からブラスバンドでトランペットを開始。その後大学オケでオーケストラデビュー。初期~後期ロマン派にハマる。当団に第5回から参加する古参団員の一人。社会人になりしばらく経過したときに世界的なトランペット奏者であるマティアス・ヘフスに衝撃を受け、以来練習熱心な向上心溢れるトランペット吹きになる。

少し前から当団選曲委員だが就任当初は当団でやった曲しか知らないと言っても過言ではない状態であった。

谷田

幼少時、ヴァイオリンを「週1レッスンが唯一楽器触る時間」程度のやる気なさで習う。大学院生時代に10年ぶりに触ると共にフルオケデビュー。再度10年ブランクがあり、38歳から再度オケで弾き始め今に至る。なお普段はコントラバスを弾いており、大学からオケに入りコントラバスを始め4年ほど弾いたのち、大学院と社会人初期の6年ほどブランクを経て、ブルーメンフィルハーモニーで活躍中。

ツェムリンスキーを熱く語る(後半)

前編はこちらです。ツェムリンスキーを取り巻く時代背景と人物について語ってます。

ツェムリンスキーの他の作品について

司会:交響曲第2番と「人魚姫」の間には、作風が変化するほどの「いろんなこと」があったということですね。少々雑なまとめですが(笑)。まさに、お二人の会話の中で後期ロマン派と新ウィーン楽派、それ以降の時代をつなぐ作曲家だったということが見えた気がします。今回取り上げる交響曲第2番以外のツェムリンスキーの作品についてはどのようにお感じでしょうか?

山崎:私はツェムリンスキーの合唱付きの曲もなかなか好きです。例えば、合唱と管弦楽のための詩篇第23番とか。

谷田:Wikipediaによれば管弦楽、室内楽、ピアノ曲や合唱曲など含め60曲ほどあるようですが、私がスコア・音源で知っているのは、交響曲1,2番と交響詩『人魚姫』、抒情交響曲、クラリネット三重奏曲(Vn,Vc,Pfに編曲しなおし版)の5曲しかしりません。拡げても、幼少のコルンゴルドの曲をオーケストレーションしなおした「雪だるま」とピアノ編曲しなおしたマーラーの交響曲6番くらいです。

山崎:いやいや、それだけ知ってれば十分では(笑) 

collection.jpg
谷田さんのコレクション。凄いです!

谷田:話を戻すと交響曲2曲はどちらもお勧めです。すぐには無理でも人魚姫と共に演奏機会あればうれしいです。 1番は30分ちょっとで中プロにも持ってきやすいかと。どうせなら1番&人魚姫とか。ただ、もっと世の中にツェムリンスキーが浸透しないと無理ですかね(笑)

交響曲第2番について

司会:さて、そろそろ肝心の交響曲第2番についてお話を伺えればと思うのですが。どのあたりに魅力を感じますか?

山崎:私の場合、その曲を気に入るかどうかは「心がジ~~~ンと震えるか」です。そういう意味では、交響曲第2番は心が震えました。知識がないので音楽的な解説はできませんが、響きや旋律を含めて、全部気に入ってしまったという感じです。私の勝手な感覚だと、シューマンをベースに、マーラーとブラームスをちょっと混ぜて、さらにシューマンやブラームスよりも心温まる感じ、マーラーよりも身近で人間味溢れる純粋さや素朴さを感じます。

司会:私もご多分に漏れず選曲の最終候補に残った時にこの曲を初めて聴きました。色んな演奏を聴いたり調べたりして感じたのは、この曲の形式的逸脱の寸止め感はブラームスの交響曲第4番を限界に設定したのではないかということです。第4楽章のパッサカリアなんて形式的にはそっくりですよね。だけどブルックナーやワーグナー、そして周縁国の国民楽派の影響もあって、オーケストレーションがはみ出しちゃってる(笑)。このあたりの特徴は当団でも取り上げた、後年のシェーンベルクが行ったブラームスのピアノカルテット1番の編曲と共通してて「ああ、この人、新ウィーン楽派との繋ぎ目なんだな」と強く感じました。
(↑司会なのに熱くなってしまいました笑)

谷田:曲そのものに対する感想ではないのですが、この曲は1897年作曲で、ブルックナーやブラームスが亡くなった頃の曲です。マーラーもまだ2番を書いて演奏されたまでしかいってない頃。その時代に過去の作曲家の影響受けながら新しいもの取り入れているんだろうなーと思ってました。1番だと更に数年前でまだ二十歳過ぎの若者が書いたことになる、と。ハンスロットやショスタコーヴィチが二十歳過ぎで交響曲書いてるのと合わせ、「いやーすげーわ」といつも思います。その後メインの「職」は指揮者と思いますが、そこで並行して作曲も続けるというのはマーラー もそうですが「やっぱりすげーわ」と思います。

終わりに

熱い対談ありがとうございました。最後に今回の演奏に寄せて、何か仰っておきたいことはございますか?

谷田:まずフライハイト交響楽団には得意とする後期ロマン派を更に深めて頂きたいと思ってます。まず団員の皆さんに既に何度も演奏しているマーラー、ブルックナー、R.シュトラウスに加え、ツェムリンスキー、コルンゴルド、ハンスロットの交響曲、協奏曲、管弦楽曲もより知って頂き、かつ演奏することですかね。

谷田&山崎:また今回の演奏会ではお客様にツェムリンスキーの魅力が何かしら伝わり「人魚姫も聴いてみるかな?」という方がより増えることを願います。

既に数年前のスコア出版以来、昔よりはツェムリンスキーの認知度は以前に比べ向上していると思いますが、まだまた世界にツェムリンスキー愛が足りなすぎると思うので。世の中をツェムリンスキーで満たしたい!!

対談を終えて

様々な作曲家の影響を受けつつ、自らも教師、指揮者として多くの作曲家に影響を与えた、実は音楽史的にとても大事な作曲家ツェムリンスキー。彼を起点として、ブラームス、マーラー、シェーンベルクらとの関係やウィーン世紀末の文化に興味を拡げると、とても面白いのではないかと思いました。

変ロ長調で書かれた明るい交響曲第2番は、初めて聴く方にも親しみを感じていただけるはずです。ぜひ、演奏会にお越しください!


第47回定期演奏会

2020年2月9日(日) 13:30開場14:00開演
すみだトリフォニーホール大ホール
指揮: 井﨑 正浩
ワーグナー:楽劇「トリスタンとイゾルデ」から前奏曲と愛の死
ツェムリンスキー:交響曲第2(3)番 変ロ長調
ベートーヴェン:交響曲第7番イ長調

入場料(全席指定) S席2,000円 A席1,000円
チケットぴあ 0570-02-9999(Pコード:P169-046)


2020/01/18

対談企画「ツェムリンスキーを熱く語る」その1

ブログの中の人です、大変ご無沙汰しております。

今回の定期演奏会で取り上げるアレキサンダー・フォン・ツェムリンスキー。この名前をご存知の方はどれだけいらっしゃるでしょう。よほどのクラシックファンでも、実演を聴いたことがある人はそうはいないはず。そんな中、あえて代表作である「人魚姫」でも「抒情交響曲」でもない、初期の作品「交響曲第2番」を演奏するにあたり、その魅力を伝えるべくフライハイト交響楽団のメンバーによる初の座談会を開催しました!

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プロフィール

山崎

中学からブラスバンドでトランペットを開始。その後大学オケでオーケストラデビュー。初期~後期ロマン派にハマる。当団に第5回から参加する古参団員の一人。社会人になりしばらく経過したときに世界的なトランペット奏者であるマティアス・ヘフスに衝撃を受け、以来練習熱心な向上心溢れるトランペット吹きになる。

少し前から当団選曲委員だが就任当初は当団でやった曲しか知らないと言っても過言ではない状態であった。

谷田

幼少時、ヴァイオリンを「週1レッスンが唯一楽器触る時間」程度のやる気なさで習う。大学院生時代に10年ぶりに触ると共にフルオケデビュー。再度10年ブランクがあり、38歳から再度オケで弾き始め今に至る。なお普段はコントラバスを弾いており、大学からオケに入りコントラバスを始め4年ほど弾いたのち、大学院と社会人初期の6年ほどブランクを経て、ブルーメンフィルハーモニーで活躍中。

今回が第45回定期(ブルックナー作曲交響曲第5番他)に続き当団2回目の参加となるが、とあるアカウントにZemlinskyが含まれていたことにより召喚された(笑)

ツェムリンスキーを熱く語る

取り上げた経緯について

司会:演奏会の数が年に数回というアマチュア・オーケストラにとって、演奏会の選曲は非常に重要なものです。団員による投票や意見収集によって決めているところが多く、プログラム自体がオーケストラの個性を表すと言っても過言ではありません。フライハイト交響楽団は前回のチラシで「後期ロマン派を最も得意とする」と宣言している通り、ブルックナー、マーラー、リヒャルト・シュトラウスなどの作曲家を好んで演奏してきました。

今回取り上げるアレクサンダー・フォン・ツェムリンスキー(1871年~1942年)はウィーンを拠点に活躍した作曲家・指揮者であり、まさにこの後期ロマン派を代表する作曲家であるマーラーやブラームスに認められ世に出た次世代のグループ、新ウィーン楽派に属する作曲家です。

新ウィーン楽派の代表的な作曲家としてはシェーンベルクやベルクなどがいますが、ツェムリンスキーはウィーンでこのような有名作曲家と多くの親交を結んだにも関わらずほかの作曲家に比べて知名度はかなり低いと感じます。どうして今回ツェムリンスキーを取り上げることになったのでしょうか?

山崎:この曲を提案したのは僕なんです。ツェムリンスキーの作品で初めて聴いた「人魚姫」をとても気に入り、ほかの作品も聴いてみたところ「交響曲第2番」に出会いました。

谷田:「人魚姫」に出会ったのはどういうきっかけだったんですか?

山崎:インターネットで「演奏機会が少ないけれども実は名曲」というのがないかと探していて(笑)。「人魚姫」は割と共通して挙げられているんですよね。

谷田:指揮者の森口真司さんが「人魚姫」について論文(こちらをクリック)を書かれています。論文に漏れている幾つかの演奏会を合わせると1989年若杉弘指揮・東京都交響楽団以降、2018年時点で日本では22回演奏されたようですが、そのうち14回が2010年以降。そこからアマチュアの演奏も多く入ってくるので、知ってる人は知ってるという感じですよね。

山崎:「人魚姫」はとても気に入ったのでいつかやりたいとは思っていますが、正直いきなりだと音楽的・技術的にちょっと難しいかな、と感じたので、まずは聴きやすい「交響曲第2番」を選曲会議で提案したんです。

谷田:ほかの選曲委員の反応は?

山崎:ツェムリンスキー?誰それ?ロシアもの?みたいな(笑)

谷田:やっぱり(笑) 

山崎:それでもめげずに「いい曲だから、まずは1回聴いてみて!」とコツコツと地道な活動をした結果、賛同してくれる人が増え、最終投票に残りました。カップリングのベートーヴェン「交響曲第7番」の人気に後押しされた部分も大きいとは思いますが、個人的には隠れた名曲+名曲中の名曲というバランスの取れた良いプログラムができた!と満足しています。

谷田:それにしても「フライハイトでやった曲しか知らないと言っても過言ではない」状態から、「選曲会議で提案」「コツコツと地道な活動」「賛同してくれる選曲委員も出て」「選曲案に残り」までのストーリーは劇的でドラマを感じますよね。

ツェムリンスキーの作風の変化

司会:お話を聞くと、いつか「人魚姫」を演奏するための布石を置かれたように思えますが(笑)。交響曲第2番(1897年)は、ツェムリンスキー初期の作品であり、代表作である「人魚姫」(1905年)や「抒情交響曲」(1924年)の作風とは隔たりを感じます。(カッコ内はいずれも初演年)

谷田:1890年代に書かれた習作を除く2つの交響曲は、ドヴォルザーク、ブラームス、シューマンなどの影響を感じる瞬間が多いです。一方、「人魚姫」はワーグナーやR.シュトラウス、「抒情交響曲」はマーラーですかね。あくまで個人的な印象ですが。

山崎:交響曲第2番と「人魚姫」は全然違いますよね。どこかで線を引くとしたら、この2曲の間だと思います。作曲家の中で大きな変化があったんでしょうね。

谷田:交響曲第2番はそれまでツェムリンスキーを後押ししてくれたブラームスの死後間もなくに完成しています。だから、ブラームスへのオマージュを感じる部分が多いのかもしれません。前年(1896年)にはブルックナーが亡くなり、同年(1897年)にはマーラーがウィーン宮廷歌劇場の芸術監督に就任するという時でした。同じくしてウィーンの芸術界は保守派と進歩派の激しい対立があり、音楽家も無縁ではありません。価値観が大きく揺さぶられた時代の影響は大きかったはずです。

山崎:なるほど

谷田:私達はその時代に生きたわけではないし、その時代いた作曲家の本心も知らないですが、色んな曲を聴き、僅かに文献を見る限り、どちらかだけに傾倒することなく曲を作っている若手が少なくなかったと感じております。マーラー然り、このツェムリンスキー然り、1884年25才没ですがハンスロット然りです。てことで、チラシ裏の「本人はこの論争に興味がなかったらしく両者の作風をうまく取り入れた曲を作っています」に同感です。そしてシェーンベルクに教え、影響を与えたという点で新ウィーン楽派に繋がるとも思いますし、コルンゴルドにも影響を与えたという点でハリウッド音楽にも繋がると思います。まあ、当時の作曲家は皆影響を与え合っていたと思うので、言いだしたら切りないですね。

(司会の心の声:熱くなってきた!)

山崎:さらにツェムリンスキーの場合、人生の岐路もありましたよね。作曲の弟子だったアルマ・シントラーと恋愛関係になったにも関わらず、わずか1年ほどでマーラーに奪われたり……。

谷田:しかも自分が指揮する演奏会でアルマとマーラーは出会ってるわけだからね。

山崎:「不細工だ」とか陰口言われてね(笑)。

谷田:自分の妹が、シェーンベルクと結婚したのもその頃。弟子であり、同志であり、ライバルであったシェーンベルクとの関係がより強化したことは大きいでしょうね。ちなみに「人魚姫」と、シェーンベルクの「ペリアスとメリザンド」は同じ演奏会で初演されています。

山崎:「人魚姫」も「ペリアス」も物語をベースとして、成就しない愛と死がテーマですしね。今回演奏するワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」にも通じるものがあるような?

次回に続く

思った以上にネタがあり、長くなってしまったので一旦ここで切らせていただきます。次回は交響曲第2番を含むツェムリンスキーのお勧めの曲についてからとなります。お楽しみに。

第47回定期演奏会

2020年2月9日(日) 13:30開場14:00開演
すみだトリフォニーホール大ホール
指揮: 井﨑 正浩
ワーグナー:楽劇「トリスタンとイゾルデ」から前奏曲と愛の死
ツェムリンスキー:交響曲第2(3)番 変ロ長調
ベートーヴェン:交響曲第7番イ長調

入場料(全席指定) S席2,000円 A席1,000円
チケットぴあ 0570-02-9999(Pコード:P169-046)


2019/07/15

当団木管五重奏がママキッズコンサート出演

定期演奏会が終了して間もないのですが、文化放送様主催のイベントに出演してきました。

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ヴァイオリンの中澤様、ピアノの柘植様の素敵な演奏の幕間に、毛色を変えて木管五重奏で楽しんでいただく、という企画でした。定期演奏会までは時間が取れなかったので終了翌週の土曜日、本番前日に初合わせを行いました。文化放送様に練習会場を提供いただき、シリアスな定期演奏会から一転、リラックスした雰囲気で初回(そして最後の)練習を終了しました。


翌日は本番。スタジオで流れの確認を行いました。スタジオは非常に音響が良く、極めてデッドなのにもかかわらずすべての音がくっきり聞こえる環境でした。上の映像としたの録音を比較していただけると良く分かると思います。


その他こんな曲もやりました。


本番ですが、プロのお二人の素敵な演奏、そしてなんと楽器未経験の乳幼児と小学生をわずか10分くらいできらきら星の合奏を出来るようにしてしまうという驚愕の企画、我々の演奏、そして再びプロのお二人の素敵な演奏という流れでつつがなく終わりました。

目の前の女の子がノリノリで我々の演奏を本当に楽しそうに聴いてくれたのがとても印象的でした。あと曲の解説などで話をしているときはざわついてた会場が音が出たら静かになる、というのも印象的で音楽の持つ力を改めて感じた一日でした。

ちなみにですが、たまたま私の息子が発表会で弾いた曲をやってくれ、私も大満足でした。

今回はあまりにも依頼から出演まで短かったのでご案内できませんでしたが、このようなアウトリーチ活動も今後はなるべくこちらでお知らせしていきますのでよろしくお願いいたします。